会社員時代に、派遣社員や業務委託の人と一緒のチームで仕事をすることがあった。誰かが辞めると新しく派遣社員の人が入ってくる。社内を案内したり、仕事内容を説明し、その後に雑談をしたりする。そうすると緊張がほぐれてくるので「何か質問ある?」と聞くと、必ず質問されることがある。
それは「この会社ってバレンタインデーやってるんですか?」という質問だ。
これは確実に聞かれる。女性なら気にならない人なんていないだろう。なぜバレンタインデーのことを聞くかというと、「バレンタインデーで男性社員にチョコレートを配りたくない」と心の底から思っているからだ。
まず、お局様がどの会社でもいる。そのお局様たちが「今年もバレンタインやります!」と言えば他の女性社員は逆らうことはできない。感謝もしていないし、何なら喋りたくもない男性社員のところに行って「いつもお世話になっています。女性社員からの感謝の印です。」と言って、チョコレートを渡すのだ。これは地獄絵図だ。メンタルがやられる。
誰が誰にチョコレートを渡すのかは、お局様によってあらかじめ決められている。地方にいる社員へのチョコレートの発送担当まで決められている。なぜそんなにバレンタインデーにチョコレートを渡したいのかが、ほとんどの女性社員には理解できない。それでも「絶対に渡したい!」とお局様が言うんだから渡すしかないのだ。
チョコレートをもらった男性社員だって大変だ。ホワイトデーに必ずお返しをしなければならない。一番下っぱが幹事をやらされる。男性社員からお金を集めるのだが、お金を渡さない男性社員もいるし、「俺は参加しない」とチョコレートをもらったにも関わらず、参加を拒否する男性社員だっている。
チョコレートだって、そこら辺のスーパーで売っているチョコレートを渡そうもんなら子々孫々まで女性社員に呪われる。そのため、毎年デパートへ行き、高級チョコレートを買わねばならない。それも女性社員が買ったチョコレートよりも高くないと許されない。「どんだけケチやねん!」と女性社員全員から、会社を辞めるまで言われ続ける。
会社で働く女性にも男性にも地獄でしかないバレンタインデー。それを一度でも体験すればトラウマになる。そのため「この会社でも、バレンタインデーにチョコレートを渡さなければならないのだろうか。」と不安になり質問してくる。
その際「昔はやってたけど、今はもうやってないよ。」と言ってあげると「前の会社ではバレンタインデーやっていて本当に嫌だったんです!」と堰を切ったように喋り出す。そこで一気に派遣社員さんと仲良くなれたりする。
それほど女性社員はバレンタインデーの社内行事が嫌なのだ。チョコレートを渡すと本当に喜んでくれる男性社員もいるけど、ほとんどの男性社員は「ホワイトデーのお返しが目当てなんだろう」と気付いている。
誰も本気で日頃の感謝のためにチョコレートを渡していないので、バレンタインデーは社内行事ではなく個人でやって欲しい。